統合失調症とは?原因、症状、治療は?

[どんな病気か]
 10歳代後半から30歳代前半の間に発症し、徐々に進行します。症状は、幻覚(げんかく)、妄想(もうそう)のほか、無為(むい)(意欲が低下し、何もしなくなる)、自閉(じへい)(他人と交流をもたなくなり引きこもりがちになる)がおこってきます。人格も、病気になる前と比べて、創造的で生き生きした部分がなくなります。2002年に精神分裂病より呼称が変わりました。
[原因]
 およそ120人に1人の割合(0.8%)で発症します。かなり高い頻度であり、けっして「珍しい病気」ではないのです。
 脳内の神経と神経の間ではたらいている物質が関係しているといわれていますが、明らかな原因はまだわかっていません。ストレスや環境の変化など、外部の因子でおこったのではなく、脳の中に原因があるという意味で、統合失調症と躁(そう)うつ病は、内因性精神病(ないいんせいせいしんびょう)ともいいます。
 両親の一方が統合失調症の場合、その子どもが統合失調症になる割合は約16%といわれ、一般人口中の統合失調症になる割合より高いことから、発症には、ある程度遺伝が関係していると考えられています。
 しかし、一卵性双生児(いちらんせいそうせいじ)の1人が統合失調症であっても、もう1人が統合失調症である確率は100%ではなく、約60%であり、このことは、統合失調症の発症には、遺伝だけではなく、それ以外の要因も関係していることを示しています。

[症状]
 幻覚、妄想、意欲の低下がおもな症状です。
 そして、幻覚、妄想、興奮(こうふん)などの派手(はで)な症状(陽性症状(ようせいしょうじょう))と、意欲の低下、自閉、感情鈍麻(かんじょうどんま)といった目立たない症状(陰性症状(いんせいしょうじょう))に分けられます。病気の初期には、陽性症状が主体ですが、徐々に陰性症状が主体になってきます。
 抗精神病薬は、陰性症状よりも、陽性症状によく効きます。陰性症状に対しては、薬物療法だけでなく、作業療法やデイケアなどを行なっていきます。
●幻覚
 実際にはないものをあると知覚することを幻覚といいます。知覚の内容によって、幻聴(げんちょう)、幻視(げんし)などに分けられます。たとえば「人の声が聞こえる」(幻聴)、「物が見える」(幻視)などと訴えます。
 統合失調症でもっともよくみられる幻覚は、幻聴です。幻聴の多くは人の声です。話される内容はさまざまですが、「……しろ」と命令したり、本人の悪口や本人を迫害するような内容が多く、このことで患者さんは非常に不安な気持ちになったり、被害妄想(ひがいもうそう)を抱いたりすることがあります。
●妄想
 事実ではないことを、本当であると確信することを妄想といいます。周りの人が、「それはちがう」と説得しても、訂正できません。内容によって、被害関係妄想(ひがいかんけいもうそう)(無関係なことを自分自身に関係があると被害的に確信します。たとえば「あの人がせきをしたのは自分へのあてつけだ」など)、注察妄想(ちゅうさつもうそう)(「誰かから家の中を監視されている」など)、被毒妄想(ひどくもうそう)(「食べ物に毒を入れられている」など)、血統妄想(けっとうもうそう)(「自分は天皇家の子孫だ」など)、誇大妄想(こだいもうそう)(「自分はすごい発明をした」など)と名前がつけられています。
●意欲の低下
 統合失調症では、徐々に意欲がなくなっていくのが特徴です。程度の差はありますが、多くの患者さんにみられます。仕事をてきぱきできなくなるという軽いものから、学校や職場を休みがちになる、家でごろごろするようになる、入浴をいやがったり、身の回りをかまわなくなるなどさまざまです。
 意欲の低下がひどくなると、1日中ボーッとして、ほとんど何もしない状態となり、これを「無為(むい)」と呼んでいます。
●自閉(じへい)
 他人との交流が乏しくなります。友人との付き合いを避け、家にこもりがちとなることで、気がつかれます。
●感情の鈍麻(どんま)
 喜怒哀楽(きどあいらく)の豊かな感情が少なくなります。テレビをおもしろく感じなくなったり、笑顔がみられなくなったり、悲しいときも平然としていたりします。
●思路(しろ)(思考過程)の障害
 患者さんの話し方でわかります。よくみられるものに「思路弛緩(しろしかん)」があります。話が徐々に別の話題にそれていったり、唐突に別のことを言い出したりします。重症になると、他の人にはまったく話の意味が理解できない「滅裂思考(めつれつしこう)」になります。
●身体症状
 不眠が多くみられます。病気の初発症状や、再発するときの最初の症状であることが少なくないので、注意が必要です。身体面には何も異常がないのに、動悸(どうき)、頭痛、倦怠感(けんたいかん)などの、いわゆる身体愁訴(しんたいしゅうそ)を訴えることもあります。
●表情に現われる症状
 ぶつぶつ独(ひと)り言(ごと)をいう独語(どくご)や、おかしくもないところで笑う空笑(くうしょう)がみられます。しかめ顔(がお)(顔をしかめる)、ひそめ眉(まゆ)(眉をひそめる)がみられることもあります。感情が鈍くなる感情鈍麻のため、顔の表情が乏しくなります。
◎病型
 大きく、破瓜型(はかがた)、妄想型(もうそうがた)、緊張型(きんちょうがた)に分かれます。
●破瓜型
 破瓜期とは思春期のことをさします。3型のなかでも発症年齢が低く、思春期によく発症します。統合失調症のもっとも典型的な病態といわれています。幻覚、妄想といった陽性症状もありますが、むしろこれより意欲の低下、自閉といった陰性症状が目立ちます。急に症状が出るのではなく、ゆっくりと現われてきます。1~2年たって、発症に気がつくことすらあります。
 初めは学校を休みがちになったり、友人と遊ばなくなったりします。家族も、「なまけ」ぐらいに考えているうちに、ほとんど家にこもるようになり、家族とも話をしなくなります。また、入浴や着替えをいやがり、不潔でいても平気になるなど、だんだん病状が進行するにつれて、人格の水準が下がってきます。
●妄想型
 妄想が主症状です。発症年齢は3型のなかでも高く、20歳代後半から30歳代に多くみられます。破瓜型のように、人格水準が徐々に下がることは少なく、比較的人格が保たれています。
●緊張型
 興奮、滅裂な言動あるいは緘黙(かんもく)(押し黙ること)、幻覚、妄想が急速に(数日から数週の間に)おこってきます。
 症状は非常に激しいのですが、持続は短く、1~3か月もすれば、ほぼ落ち着きます。病状が落ち着いた後は、破瓜型のような人格の低下はあまりみられません。ただし、再発しやすいのが特徴です。
◎経過
 経過はさまざまですが、最初は幻覚や妄想、落ち着かない状態で始まり、薬物療法で幻覚や妄想がおさまっても、その後で意欲の低下した状態が続く場合が多くあります。
 薬物をやめてしまった後や、ときには薬物服用中でも、再び落ち着かない状態になり、病気が再燃(再発)することがあります。このような再燃は何回かくり返すことがあります。
 意欲の低下や自閉は、経過とともに徐々に強くなっていき、病気になる以前より人格の水準が落ちます。これを欠陥状態(けっかんじょうたい)と呼んでいます。
 ほぼ完全によくなる場合が3分の1、欠陥状態になる場合が3分の1、人格の荒廃(こうはい)をきたす場合が3分の1といわれています。

[治療]
 薬物療法が治療の中心です。抗精神病薬という薬を飲みます。この薬は、とくに幻覚や妄想によく効きます。
 幻覚や妄想が薬で消失した後に、軽度の抑うつ状態になることがあります。抑うつ状態が改善しても、意欲の低下した状態が続きます。
 この時期には薬物療法に並行して、軽作業やレクリエーションなどを行なう、作業療法やデイケアに通うなどして、意欲や自発性の低下を改善するようにします。
 抗精神病薬の副作用として、手足の動きがかたくなったり、手の指が細かく震(ふる)えたり、足がむずむずしたりする症状が出ることがあります。このため、パーキンソン病の治療に使う薬を飲んで副作用を防ぎます。また、便秘(べんぴ)、眠け、目が見えづらいといった副作用が出ることもあります。
 このような症状が出たときは、医師に相談して、副作用を防止する薬を出してもらったり、薬を調節してもらったりします。副作用が出たからといって、勝手に薬を中断するのはやめましょう。
 薬は再発予防の効果もあるので、病状が落ち着いても、飲み続けることが多いのです。病状が落ち着いた時期でも、よくなったからといって、薬を勝手にやめないようにしてください。
 心理的にはたらきかける精神療法も、薬物療法や作業療法に並行して行なわれます。身体的治療法の電気けいれん療法は以前に比べて、行なわれることが少なくなりました。
●家族はどう対応すればよいか
 精神科、神経科(神経内科ではありません)、精神神経科を標榜(ひょうぼう)している病院もしくは診療所を受診します。患者さんは病識(びょうしき)がないので、受診をいやがることがあります。このときは、まず家族だけが病院に行って相談してもかまいません。また保健所でも、相談にのってくれます。
 診察しても、すぐに統合失調症と診断できないこともありますが、この場合は医師が経過をみていきます。統合失調症のような症状をだしながら、別の病気(脳炎(のうえん)、脳腫瘍(のうしゅよう)、その他のからだの病気)が原因のこともあります。
 統合失調症の症状が軽いときや、家族が家で看(み)られる場合は、外来治療になります。
 患者さんの苦痛がひどいときや、症状が激しく家族が家で看られない場合は、入院になります。
「統合失調症」といわれた場合、非常に驚くでしょうが、前でも述べたようにまれな病気ではありません。就職などなんらかのストレスの後で発症することもありますが、これはあくまでも引き金でしかないと考えられています。ストレスや環境とかの外的要因でおこる病気ではありません。ましてや、親の育て方が悪かったためにおこった病気ではないのです。
 病気はよくなったり悪くなったりをくり返すことがあるので、あまり一喜一憂しないほうがよいでしょう。長期戦と思って、どっしり構えてください。そのほうが家族も疲れませんし、患者さんにとってもよい影響を与えます。
 精神障害者対象の福祉関係の制度も、積極的に利用するとよいでしょう。条件を満たせば、障害基礎年金(しょうがいきそねんきん)の支給が受けられます。通院費の公費負担や精神障害者手帳の交付の制度もあります。かかりつけの病院、保健所、役所の国民年金課などで相談してみてください。
●社会復帰のために
 幻覚や妄想などの症状が軽快して、意欲の低下が強くなった場合、入院患者さんには、作業療法を行なうこともあります。簡単な作業をしたり、レクリエーションや趣味的なことをするなどさまざまです。
 入院患者さんまたは通院中の患者さんに、生活技能訓練(SST)という社会復帰のための教育をすることもあります。
 通院患者さんのためのデイケアは、医療機関のほか、保健所でも行なわれています。
 そこでは、スポーツ、料理などいろいろなプログラムがあり、サークル活動のような雰囲気のなかで、社会性や対人関係の改善を目ざします。
 通所授産施設(つうしょじゅさんしせつ)、共同作業所は、一般の就労がまだむずかしい人が作業をするところです。
 ひとりで生活することができない人のために、生活訓練施設(援護寮(えんごりょう))、福祉ホーム、グループホーム、
といった、患者さんが共同で住める施設も、少しずつですができてきています
<まとめ>
統合失調症は、精神分裂症の現代版の名称です。精神分裂症は、過去に日航機墜落事件の片桐機長の精神病としてとても有名になりましたね。統合失調症はあまり世間に知られていない病気です。この病気の方と筆者は一緒に仕事したことがありますが、見た目はもちろんのこと、話も普通にできますし仕事もきちんとこなせる。ただ間違いを認めないとか、自分を誇大に評価しているところとか、妄想も多かったたように見受けられます。この人は、薬での治療をしていたので社会で働くことができるレベルだったのでしょう。上記の病状の説明文を見ると、すげーー病んでる症状が出るんだなって思われますが実際接してみると普通です。精神疾患は外から見て理解されにくい分、本人は葛藤が大きいと想像されます。